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Animation
Creators
■作品解説
パソコンによる、「レイトレーシング法を使用したCGアニメーション」の第一弾であり、技術検証およびデモの狙いがありました。
NEC PC-9801のカラーCRTモニタに表示されたCG画像を、8ミリフィルムカメラ 「フジカ シングル8 ZC1000」でモータ制御でコマ撮り撮影しています(※)。
作品は4種類のシーンから構成されています。レイトレーシング特有の表現を活かすため、影と反射にこだわるモデリングおよびライティングを意識しました。
なお、当初は映画「Blade Runner」のタイトル曲をBGMにしていましたが、ネット公開にあたり、新規オリジナル楽曲に差替えています。
音楽:いしいの音楽制作所
<https://www.ishiimusicweb.com/>
<こぼれ話>
当時、宮城県美術館が会場となっていたローカル開催のアマチュアアニメ上映会がありました。ここで本作品のお披露目公開が行われた際に、会場がすぐにざわつきはじめました(観客は手書きアニメと違和感)。最後のスタッフロールで、パソコンにより生成されたCG映像だったことが判明すると、観客の「ざわつき」が「どよめき」に変わったことが記憶に残っています。
(※)1985年当時は自主制作アニメーションは8ミリカメラで撮影するしか手段がなく、その大変さは、「CHRONICLE:歴史解説文書」"001「DoGA」の設立経緯とその目的" が参考になります。<https://archives.cganime.jp/chronicle/>
■画像データ
CG部分 37sec x 12fps = 456枚をレンダリング(撮影は24fps)
解像度は 640x400 で RGB各8bit
演算機材 : 友人らの PC-9801F2 計6台 (i8087無し)
※当時は記録媒体としてHDDは無く、720KBの5インチ2DDフロッピーディスク数百枚で画像データをやり取りしていました。レンダリングは、PC-9801を所有する友人らの自宅に 5インチフロッピーディスクを毎日配り、レンダリング画像が記録されたフロッピーを回収していました。レンダリング時間は1フレーム1時間以内としました。
■ソフトウエア
N88-BASIC言語 によるレイトレーシング ソフトウエアを自作しました。
ベースは、山本強 著「パソコンによる3次元グラフィックスの実際」に掲載されていたソースコードです。ただし、処理高速化のために以下の改造を行っています。
1) 画面の水平1ラインの処理は、1回目のパスはスキャンライン的に物体の開始・終了位置を計算し、次のパスでその間だけレイトレーシングを行う高速化を実装。
2) ベクトル積和演算の高速化のために、内部でメモリ間の転送を行わず、演算専用の機械語ルーチンを呼び出して計算を処理。
アニメーションやテクスチャで周期性が現れないように乱数の作成に苦労しています。
シーン2でバイクが通り抜ける半円形フレームが破綻していますが、これは演算精度の調整不足のためです。
オブジェクトをアニメーションするためのソフトウエアもBASICで自作しています。
物体やカメラの移動回転をスクリプト的に定義して、フレームごとの座標情報に変換する内部処理を行っています。なお、シーン4ではローターの回転初期値にミスがありますが、ギリギリ破綻していません。
PC-9801は画面に8色しか表示できないので、2x2ピクセルでディザリングを行いますが、シーン1ではパターンを固定にしてしまう失敗があり、その後はフレームごとに変化させました。
<こぼれ話>
ソフトウエア担当(森)は 、所有のPC-8801(8bitマシン)で開発を行いました。ターゲットのPC-9801(16bitマシン)との間のN88-BASICの互換性に助けられました。
■撮影
東北大学アニメ研が所有する 8mmフィルムカメラ「ZC1000」のフィルム送り軸に、小野寺がステッピングモータを接続し、木製の台に固定して自作のコマ撮りシステムを作りました。ステッピングモータはPC-9801のパラレルI/F経由で制御しています。
撮影制御プログラムにより、PC-9801のCRTモニタ画面への表示と、画面のコマ撮り撮影が自動同期で行うことが可能でした。この時、最適なF値と露光時間を決めるために、条件を様々に変えたテストを行っています。
<こぼれ話>
撮影は、森が当時借りていた八木山のアパートの一室で行われました。フロッピーディスクを昼夜交換し続けてカメラ撮影するため、外の光が入らないように窓ガラスにアルミホイルを張り付け、部屋をまるごと暗室化する(!)というノウハウを開拓しました。